パステル画の描き方…私の場合

ここではパステル画の描き方について、説明させていただきます。
私もそれほど使いこなせているとは思いません。しかし、パステルは情報が不足しているので、参考にはなるかと思います。
作品の制作過程を例に、細かい技法と合わせて、なるべく具体的に説明したいと思います。

⚫︎パステル画の支持体(紙)

パステル用の紙が存在します。
それらの多くは色のついた紙です。

パステルは明るい色を多用しますし、明るい色が綺麗です。
色のついた紙の上から色をのせた方が、色がしっかり映える。また、白い紙に描き進めると、紙の目に残った白が目立ってしまいます。
つまりは紙に色がついていた方が、パステル画にとって都合がいいです。

パステル用の紙は手間がなく、扱いやすいです。しかし私は、水彩紙に着彩して支持体を作っています。
理由は人工的なべた塗りな色紙が嫌いなことと、目の粗い紙が多いのですが、細目が好きなためです。

私は主にVIFART水彩紙か、本気で描くときにアルシュ水彩紙を使用しています。

⚫︎私が使っている紙

VIFART水彩紙(ブロック)
VIFART水彩紙(ブロック)
手前が極細目、奥が粗目。
主に極細目を使っています。目の粗さは描き味に直結します。
タッチを残したいときは粗い方がよく、細かく描いて仕上げたいときは目が細かい方が良いです。
アルシュ水彩紙
アルシュ水彩紙
写真は極細目のものをパネルに水張しています。
私は極細目しか使用した事がありません。かなり完成度にこだわるときにしか使用しません。(高額です)


⚫︎パステル画の描き方(制作過程の説明)

ここでは実際に制作したものを元に説明していきます。できるだけ細かく説明していますので、真似をしてみるのもいいと思います。

⚫︎描き出し

①下地
①下地
VIFART水彩紙に透明水彩を薄くかけた状態です。
今回は細目を使用しています。
②下描き
②下描き
ザックリと色をのせます。
この段階では間違ったとしても、なんら影響ありません。
ただし、極端に暗い色は使わないようにしましょう。
②下描き(部分)
②下描き(部分)
ただ描くだけでは、ザラザラしています。
道具1
道具1
ホワイトを足します。
カッターで削って、画面にかけます。
※ホワイトを入れることで綺麗に発色するようになります。
技法1
技法1
写真のように、カッターをパステルに当てて削っていきます。
技法2
技法2
写真のように、粉にしてかけます。
たくさんかけても、紙に定着せず無駄になってしまいますので、少しづつかけていきましょう。
道具2
道具2
ただの豚毛筆です。油彩で使用するものですし、実際油彩で使用したお古です。
技法3
技法3
筆でこすり込みます。
紙を傷めたくないので、それほど力を入れていません。
技法4
技法4
筆でこすった状態です。
グラデーションが滑らかになったのが分かるでしょうか。
③1回目のぼかし
③1回目のぼかし
全体を擦り込みました。
描いただけの荒々しさは無くなりました。
道具3
道具3
さらに色をのせていきます。
まずは、画面全体に何かしらの色がのっている状態にします。
色のチョイスはこだわっていません。
技法5
技法5
色同士が混ざっていますが、大丈夫です。むしろ描き始めではいろんな色を画面に使いましょう。
完成時には残らない仕事かもしれません。
④全体にかける
④全体にかける
下地が残っているところに色をかけました。
⑤2回目のぼかし
⑤2回目のぼかし
再度豚毛でぼかしています。
色をのせてぼかすという作業を繰り返すのが、私のパステル画の基本スタイルです。
⑥陸を描く(部分)1
⑥陸を描く(部分)1
空と海だけではつまらないので、遠方の陸と砂浜を追加します。
⑥陸を描く(部分)2
⑥陸を描く(部分)2
海との境目を描いていきます。
形の決まっているものではありませんので、自由にカッコいい形にしましょう。
⑤陸を描く(部分)3
⑤陸を描く(部分)3
カッコいい線を繰り返し描いていきます。これでどうでしょうか?
絵としての雰囲気が見えてきました。
海を描いていきます。
夕焼けといえど、海は青を基本としています。
擦り付けました。
海らしくなりましたね。
さらに海を描きます。
夕陽の写り込みを描いています。
海に映る夕陽の光は縦に伸びます。あまり大きく描いてしまうと、細かく描くときに邪魔になってしまいます。最低限、ここに映っているなくらいに止めましょう。
空の調子を変える。
太陽だけを白くしたいため、明るいところを小さくします。赤く塗りつぶします。
同じように擦り付けます。
夕焼けの雰囲気が出てきました。

⚫︎描き込み

雲に色を入れます。
雲は空以上に色の変化が豊かです。綺麗にオレンジになるところ、白いところが残る部分がありますので、よく観察します。
雲に逆行を入れる。
水平線に近い雲は輪郭に光が集まります。
波打ちぎわを描きます。
波はハイライトをのせる場所だけで表現します。
境目に影を入れる。
実際に影はありませんが、濡れた砂は暗く見えます。その表現です。
ぼかしていきます。
ボケ足で波が引いた後を表現します。
波のひいたとこにも輪郭線を入れます。
輪郭線の上にホワイトをのせて、残った潮を表現します。
波を描きます。
ハイライトを入れたり、ブルーで光の当たらない部分を描いたりして、波を表現します。
波打ちぎわが良くなりました。

⚫︎仕上げ

雲を仕上げていきます。
形を変えて近景と遠景に差を付けました。空間が広く見えませんか?
全体(特に波)を描き込み完成です。
波は少しうるさい感じがします。もっとおとなしく仕上げても良いと思います。
最低限、夕陽の写り込みを表現出来れば成功です。
額装しました。
絵画のランクが上がりますね。

⚫︎完成図の詳細画像

部分ー夕陽の拡大
部分ー夕陽の拡大
夕陽の描き込みはそれほど行っていません。夕陽そのものより、むしろその周辺の描き方で、夕陽らしいかが決まります。
部分ー波の詳細画像
部分ー波の詳細画像
波は光と影の強いコントラストで描きます。
夕陽の写り込みは、できるだけたくさんの色を使います。
部分ー雲の詳細画像
部分ー雲の詳細画像
今回の絵は、雲をうまく描きたいというのが1つの目標でした。
雲に形はありませんが、やっぱり雲らしく描く必要はあります。
雲に見せるにはやはり観察力。
雲さえ描ければ、たいていの風景画の武器になります。この絵は、その訓練と言っていい。
部分ー遠景の詳細画像
部分ー遠景の詳細画像
遠景は手を抜くところは、ほとんど描いていません。
これは絵を描く上でのこだわりと言っていいかもしれませんが、全てを描くよりも、メリハリを描くつけるべきだと思います。
それでも、見せるには十分でしょ。

一作品を例に描き方を説明しましたが、あくまでも私のやり方です。
パステルは使う人が少なく、技法も確立されているとは言えません。
皆様の技法の一部になればと思います。
「夕陽と海 038」2015.2 水彩紙にパステル
「夕陽と海 038」2015.2 水彩紙にパステル